ラーメン刑事 ガサイレ日誌 in 東北
背景
2001年春のガサイレでは“ヤマセ”の影響で、ほとんど白旗状態で帰ってきた雪辱を果たすため、今年の夏はリベンジ目的で、また東北に行くことを決心した。
また、八戸で入った居酒屋「鳥しげ」のオヤジや、積雪のため入れなかった白神林道。もう一度会いたい、もう一度走ってみたいという強い欲望も確かに自分の中に存在し、その欲望が日々膨れ上がるような感覚を覚える時がある。行くしかない......。
8月13日(月)AM
7:30
今回も、ちょっと早めの7時30分に出発。前回同様、高速走行時と雨天時の快適性を考えて、昭栄のホーネットを使用することにした。なによりも、この熱い中、ゴーグルを装着しなくて良いのがありがたい。
出発の前日には、タイヤは前後ピレリのMT21に交換。そして、チェーンと前後スプロケットも新品に交換。今回は耐久性を考えて、初めてサンツアーの鉄スプロケットをチョイスした。
前回のガサイレ・ツアーでも触れたが、今回のツアーでは、MT21の高速走行時のノイズにも注目するつもり。昨年の四国へのツアーでは、ミシェランのT63のヒス・ノイズ、というかその高周波に悩まされた経験があるので、かなり楽しみである。
前回同様、まずは東北道に入り、今回は佐野S.Aで佐野ラーメンを頂くことにした。ラーメン本にはここのラーメンは専門店並みのクオリティを味わえるとのこと。ほどほどに期待して、食券を買い、立ち食いそばのブースに並ぶ。
出てきたラーメンは確かに佐野ラーメン風。しかし、そのインスタント然している作り方が、かなり気になる。食べてみると、ちょっと太目の平打ち麺は、手造りらしく不揃い。さっぱりしているスープも、佐野ラーメンで有名なおぐら屋を思い出させる。しかし、やっぱり作る人のしぐさに魂が入っていないというか、いわゆる駅そばのような感覚に違和感を感じる。やっぱり食べる人も、作る人もこだわりを持って欲しい。で、もしもウマイものを食べたときには、たとえジャンク・フードでも、どんな形でも良いから、作ってくれた人に感謝したい、という私のポリシーには合わない。さっさと食べて、高速走行再開。走行を再開して暫くしてから、舌がピリピリしてきた。スープはちょっと塩っぱかったし、化学調味料もそれなりに使っていると思われる。
相変わらず巡航距離の短いTT250Rのため何度かS.Aに入るが、すぐに出発。なにしろこの先には大学生時代に食べ損ねた、盛岡「じゃじゃ麺」に行くのだ!途中、メーター内のウインカーの電球が切れるという、珍しいアクシデントが発生した。G.Sに在庫がなかったので、とりあえずハイビーム用のものと交換して対応した。なにしろ30kmもあたりまえという、凄い帰省ラッシュの中、散々使ったせいだろうか...。
なんとか閉店前の4時頃に岩手県庁そばの盛岡「じゃじゃ麺」の名店白龍(パイロン:英語ではモータ・スポーツ好きにはきになる名前となる)に到着。関東の人は、恐らく「ジャジャ麺」でなく、「ジャージャー麺」じゃないかと思うだろう。実は名前は似ているが、中身はちょっと違う。残念ながら、名前の由来に関して詳細は分からない。
麺がうどんのように白いのと、ストロボを使って撮影したので、ちょっと全体像は分かり辛いが、正直言ってちょっと茹ですぎた乾燥うどんの上にいろいろなものが混ざった味噌をトッピングした感じ。スープはほとんど無い。盛岡の人は4時ごろだというのに、行列してまでこの店で食べるというこだわりを持っているのが、ちょっと不思議になるような味。
ほとんど食べ終えた後に、ちょこっと麺を残して卵を割り、カウンター越しにお湯と味噌をもらってつくる卵スープはなかなかのものだが、別に食べ残した皿を使う理由もあまりない、もとからほとんどスープはないのだから、残ったスープでおじやを作ってくれる、加藤系ラーメン店(旭川ラーメン:札幌ツアー参照)とはちょっと違う。
良くあることだが、あまりにも期待が高かったために、実際は結構美味くても感動が残らないケースがあるが、ここはまさにそういった感じ。なにしろ10年以上思い焦がれてきたのだから...。
ちなみに大学生の時に来たときは店が閉まっていたため、この白乾児(バイカル)という
店に入った。今ではもう味は覚えていないが、ジモピーによればイマイチとのこと。
さて、高速に戻ろうかとも思ったが、盛岡でのじゃじゃ麺の定義を確信するためにも、もう1軒ガサイレすることに。盛岡駅により近い、不来方(こずかた)というラーメン店に入る。
載っている味噌は、ほのかに蟹味噌のような風味があり、麺は白龍より腰がある。しかし逆にいえばまとまりがなく、バラバラ。シナジー効果を感じない。また、ドライブ感もない。なによりもお客さんの行列が無いのがないどころか、結構広い店舗にお客は私一人だけだったのは、はっきりいって地元の評価はイマイチということだと思う。もう一度行こうとは思わない。
盛岡についてまず気が付いたのは、バスの型式の古さ。自分が小学生の頃に使われていたバスが、未だに現役、というか主流なのにはビックリした。
お元気そうで、なによりです。
八戸には、ちょうど日が落ちきった7時前に到着。8月の中旬だというのに、気温は日中が24度〜26度。日が落ちても20度を下がることがなかった。30度以上あっても決しておかしくない時期だけに、とてもありがたかった。しかし一方、高速代金は初の8,300円。やっぱりツライ。
G.Wにとまったホテル大山にチェックイン。これまたG.Wに行った鳥しげに行くにはちょっと早いので、酒屋でビールを買った上で、先に風呂に入ることにする。鳥しげの前を歩くと、店はやっているようだ。「さてと、さっぱりしてからお邪魔するか!!」
G.Wに自衛隊の人と撮った写真を持って、お店に向かうと......なんと閉店している。まだ、9時だというのに...。しょうがないので、隣にある「きたのや」にはいる。焼き鳥や背黒いわしなどをごちそうになった。オヤジに会えなかったのは、かなり残念だが、シャッターとかを叩いても何の反応がないので、しょうがない。写真を新聞受けに入れて、ホテルに帰った。
8月14日(火)AM 7:00
なぜか朝早く目が覚めてしまったので、早速出発の準備をして、前回も訪れた「大洋食堂」に向かう。注文したのは前回同様「ニコニコ定食」で、刺身はカツオをお願いした。こういう時、朝早くからやっている店はありがたい。実は朝8時前後で席は満席状態。明らかに全員観光客といった感じで、早朝だというのに活気がある。
もちろん、お願いしたカツオは、脂がのっていて美味美味(ウマウマ)だったが、白眉は生うに!!! 前回はスプーンで直接食べたが、今回はご飯の上にのっけて、生うに丼にした。これが正解。前回はウニの味が濃すぎる印象で、あまり感動は無かったが、ご飯と混ざることで、ウニの美味さが手にとるように分かる!!!
こんなウマウマ感、たまりません!
大洋食堂をホクホク顔で後にして、十和田湖に立ち寄って見る。山が近づくとともに、霧雨のような雨が降り始める。カッパを出すほどではないので、そのまま走り続けると、青森県に入ったとほぼ同時に晴天となる。そして、まもなく十和田湖到着。湖は爽やかさはあるものの、雲が低いこともあって、ちょっとイマイチ。むしろ、ジェット・スキーの騒音が耳に残った。
長居はしなかったけど、なんかピンとこなかった。
ほとんど休息らしい休息も取らず、出発。そしてすぐに十和田湖の魅了に気が付いた。湖を周回するルートを経て、黒石に向かうことにしたのだが、その湖周回の道の美しさに、思わず気を失いそうになる!?
久しぶりにウマイ空気を堪能した後は、黒石に立ち寄ることにした。前回も登場した、昔ながらの造り酒屋で大吟醸を購入。当然、宅配便で自宅に送付。津軽クオーターとしては、早く味わってみたい。血が騒ぐ。
古い町並みが残る、こみせ通りの造り酒屋で購入!
さあ、今度は白神林道だ! ゴールデン・ウイークの時と同様に、Beech にしめや(Beachじゃないの?)でそばを頂く。前回は何気なく入って、なかなかウマイ!と思ったこの店、というよりこの駅の道、実はこの辺りは有名な西目屋そばの生産地だとのこと。前回同様山菜が盛られた、白神そば(550円)を注文した。
前回と違い、今回は期待して入っただけに、正直言ってちょっと、「アレレ...。」といった感じ。もちろん、さっぱりとした汁とともに、そばとしてはおいしいのだけれど、西目屋そばの特徴である、麺の細さと、短さにちょっと興ざめ。そばが弱すぎる。また、店の雰囲気もあるけれど、入ってくる客の多くがラーメンやカレーライスを注文する。注文する客も勉強不足だが、そんなメニューを載せている店にも問題がある。結果、店の中に作る側、食べる側に緊張感が全く無い。まあ、そんな肩肘張らず...、という感じもするけれど残念。
さあ、気を取り直して白神林道に向かう。林道に入り、暫くは固い路面の上に砂利が浮く、ちょっと神経を使う状態。しかし、約3分の1走ったところにある、津軽峠を超えた辺りから砂利がなくなり、踏み固められたフラット・ダートになる。オフロードバイクにはちょっと物足りないが、4X4のRVにはちょうど良いくらい。お盆の時期だけあって、乗用車の通行量が多いが、多くのクルマが道を譲ってくれるので、ストレスがたまることはない。
ビギナー・ライダーには丁度よいと思います。
残念だったのが、重くのしかかる雲。弘前あたりまでは晴れていただけに残念。まあ、この頃は東京では雨続きだったので、あまり文句はいえない。でも、本当に天然のブナ林を味わうのは、ハイキング・コースなどをゆっくりと歩くのが一番なのであろう。もう少し、年を取ったらまた来よう。今はまだゆっくり歩くことができない。
森も深いが、雲も重い また来よっと!
沿道である、北に伸びる赤石川林道を往復してから西に進路をとる。ダートを約60km!!くらい走って、やっと日本海側に出る。日本海側から白神山地を見ると、地図で見るよりずっと海に近いことが分かる。
白神山地から下界に戻ると、また眩しいくらいの晴天。針で突付かれているような日差しを感じながら、本日のもうひとつの目的地、黄金崎不老不死温泉に向かうことにする。走り出して小1時間、どうやら温泉に着いたようだ。
どうやら、おおきな誤解をしていたようだ。写真では分かりにくいが、2mくらいの高さの塀の向こうがその温泉。雑誌に載っているのは、波打ち際までは50mはありそうなスケール感に、荒々しい岩肌。失いかけている野生を再び呼び起こすような、その圧倒されるようなパワーを感じたいと思ってやって来たのだが、これでは大磯海岸。しかも、温泉のその横を、小学生にすらなっていないようなガキンチョが浮き輪を使って、バシャバシャしている。スケール感が小さすぎるのだ!
やはりこの温泉は、冬場にやってくるのが正解なのだろう...。すぐに立ち去った。
今日は特に行くところが無いので、とりあえず、明日に備えて秋田に向かう。青森南部から秋田県内の移動だから、たいしたことないと思っていたが、なかなか着かない。毎度ながら、東北のスケールの違いにビックリする。だんだん小腹が空いてきたので、八郎潟の南部、国道7号線沿いにある、サッポロラーメン専門店 北海に入ることにする。パチンコ屋の同じ敷地内にあるので、期待は禁物。
とりあえず、メニューの右端に書いてある「味噌ラーメン」を注文した。わざわざ東北まで来て、サッポロラーメン専門店もないよなあ...と思いながらも、食べ始める。不思議!!! 場末のラーメン屋にありがちな、化学調味料丸出しの、トンコツギトギトスープに太目の湯切りの悪い縮れ麺を想像していたのだが、非常にスムーズでコクのあるスープ。下品さ、しつこさなど全くない。で、結構ありがちな、インスタントの味噌スープを使っているのかと思い、店内を見回すが、とりあえず空き缶などを見つけることができなかった。店の中は整然として清潔。実は名店!!???
パチンコ店の敷地にある店
しっかり完食して、再び秋田市に向かう。思っていた以上に時間がかかり、適当なビジネス・ホテルが見つかった時はもう8時を回っていた。いろいろ秋田駅周辺の繁華街をまわったが、地元の味を伝えてくれるような店はもう閉まっており、散々歩き回った挙句、コンビニで日本酒と軽食を購入。なんか違う...。まあ良い、明日は稲庭うどんだ!
8月15日(水)AM 7:00
本当にこのツアーは朝早く目が覚める。こんなビジネス・ホテルにいてもしょうがないので、さっさと出発。稲庭うどんはすごく気になるが、今日は朝から林道に入ることにする。
いろいろ紆余曲折があったが、コンビニでおむすびをいただいた後、田沢スーパー林道に入る。この林道は秋田市郊外から田沢湖そばに抜け、ラフで30km以上ある。地図などではこの林道は途中通行止めという案内があるが、この林道を走れば、明日走る朝日スーパー林道を走りきれば、有名なスーパー林道をほとんど走りきることになるので、リスク覚悟で走り続けた。
路面は長い間、途中通行止めになっていたにもかかわらず、踏み固められ、よく整備されているという印象。渓流の美しさに、ついつい目を奪われる。
林間の涼しい風を感じながら、約10km位走り続ける。渓流釣りで来ている人が乗ってきたクルマが林道脇にかなり駐車されている。こんなにきれいな空気と景色、そして水とあれば、あまり釣りに興味ない私も、ゆっくりしてもよいかなと考えてしまった。
そんなことを考えながら、もう少し走って、右にカーブした後見たものは......。
現れたのは、比較的最近に崩れたと思われるガケ崩れ。多少のことでは動じない私も、さすがにこれを乗り越えていく気がしなかったので、残念ながら引き返すことにした。
「しょうがねぇなあ」と何度も口ずさみながら、この林道の北部に位置する、河北林道に向かう。ここもダート34kmあるので、距離的には十分である。ダートで約20km無駄にしてしまったという、軽い焦りを感じながら、走り始める。ダートに入って、またもや10kmくらい走ったところで、またもやトンデモないことに!!!
なんと、林道の9.5割が雨で流されていたのだ!!。確かに、お盆前の東北地方は連日雨であった。とはいえ、事実上右側路肩部分しか残っていない林道を目の前にして、暫く無言。その後、無理してでも通過するか、それとも引き返すかを考えた。バイクを降りて、何度かシミュレーションをした結果、強行突破をすることにした。問題は写真では分かりにくいが、教習所の一本橋くらいの幅と距離が残された、この路肩部分の中央点は、約2mくらい低い位置になっている。走り始めて5mくらいで2mくらい下がり、のこり3mくらいで、下がった2m分を取り返すように、上り切らなければいけない。さらに、微妙に左にカーブしている。
恐らく、チャンスは一度。失敗したら、画面左側にパックリと口を広げる崖下10mに...。トライアル・セクション並みの難しさに、心臓バクバク。暫く後続車を待ったが、その気配はない。
思い切って、そろそろと下り始め、もっとも低い位置にある中間点から、若干アクセルを開け気味にする......。
前輪が登りきったところで一度バイクを止め、一度バイクを降りてから方向を修正して、見事クリア!! やってみれば、意外と一人でもなんとかなるものだ。
河北林道自体は、このツアーで走ったスーパー林道と比べて、一番走り応えがあるが、先ほどのトライアル・セクション以外は初心者でも走れる位の荒れ具合。後ろに荷物を積んでいるので、このくらいが丁度良いのかもしれないが、今2つくらい物足りない。そして景色のほうも、わざわざバイクで山の中に入ってまで見るほどでは無さそうである。
ダートをトータルで50km以上走って、国道105号に出る。せっかくだから、田沢湖にちょっと寄って見ることにする。本当はこの日の午前中に稲庭に行って、午後には山形で山形冷やしラーメン。そして、酒田で酒田ラーメンを頂く予定であったが、一連の予定変更で難しくなってきた。焦ってアクセルを開け気味で走ってみても、田沢湖すらなかなか着かない...。
やっとの思いで田沢湖に到着。まずはその空、山並み、そして湖の藍さに心を奪われる。大雨が降った後だけに、空も山もとても澄んだ色をしている。また、強い日差しの中、その空の色を映す湖の青さも青いハレーションといった様相。湖岸に沿って走っていると、なんと黄金に輝く銅像(?)が。普段は見落としてしまいそうな佇まいではあるが、この日は空、山、湖の青さに映え、まさに一世一代の自己主張といった感じ。強い日差しの中、補色(12色相で反対の関係にある色)の2色が輝く。
ほんとはもう少しゆっくりしたいところであるが、今回のツアーの目玉のひとつ、稲庭うどんを早く食べたいので、バイクを降りることなく、稲庭に向かうことにする。 ある意味ですごく単調に南下を続ける。刺すような日差しは、温度がそれほど高くないので身体的にはあまりきつくはないが、肌を露出している部分の日焼けが気になる。
実際は写真以上にマッカッカ
田沢湖を出発して数時間かかって稲庭に到着。細い街道沿いに、複数稲庭うどん専門店があり、ちょっと戸惑うが、思っていたより、さらに奥にはいったところで、目的地である7代養助本店を発見。
この店のまず、すごいところは、その営業日。11月から4月までは毎週月曜日だけど、5月から10月までは休みなし。これはお盆の時期にしか休みをとれない人間には、本当にありがたい。これを商業主義と呼ぶ人がいるかもしれないが、昔から年貢の代わりとしてうどんを上納し、恐らく同じ心持で現在も訪れる人々をもてなしていると考えたい。そういえば、相対的な話ではあるけれど、ラーメン店でも美味い店ほど、そして魂を入れて作っている店ほど休みが少ないと思う。年中無休で、おばちゃん、おばあちゃんが休まず営業を続けている店の話を良く聞く。わざわざ、遠くから来て、休みだったら申し訳ない、というのがその理由であることが多い。近所で祭りがあるからとかで、営業日をラーメン本に載せているのに、臨時休業をとっている、そこのオヤジさん!(埼玉に多い)、なんか大切なこと忘れてませんか?
店に入り、注文したのは、冷やしと温かいうどんの両方が楽しめるセットを注文。値段は1000円。店の中は、3代による、さまざまな書が展示されている点を除けば、和風のファミレスといった感じの店内。靴を脱がなくて良いのは、小汚いブーツを履く身にはありがたい。ちょっと待たされて、このツアーのメインのひとつである、稲庭うどんが運ばれてきた。
話しには聞いていたが、想像していたより細めのうどんは、そうめんと間違えるくらいに細い。手延べでここまで細くなるとは、そしてそれを商業ベースで実際に運営しているのは信じられない。近くに工場があり、見学ができるが、ここに来る前にちょっと遠回りしたせいで、今回は断念。これだけ細い麺を手で伸ばすところを次回はぜひとも見てみたい。
で、実際に食べてみると、麺のほどよい腰と、その喉越しの良さは、一瞬食べる動作が止まってしまう。佐野ラーメンにも通じる点だが、麺に歯が当たった瞬間に、その衝撃を吸収するような柔らかさと、噛み切ろうという、こちらの意思に反して、自己の弾力性を誇示するような強い腰。その麺の細さを考えると、まさに匠の技、芸術品である。
また、ざるの付け汁は、これまで味わったことのないような深みがある。ちょっと濃い目の味付けながら、でしゃばらず、ほんのり甘く、うどんの味を引き立てる。強い日差しの中、走り続けてまで来て良かったと、しみじみ思った。これまでの疲れが吹っ飛ぶどころか、残り少なくなってきたが、これからの日程に対するパワーが沸いてきた。
ところで、うどんを乾燥後に切り落とされる、「はしっこ」が意外と好評。5分くらい茹でた後に、カツオ風味のそばつゆをぶっかけると、和風パスタのような、ちゅるちゅるとした味わいは絶品。
来店の際には無料でお持ち帰りできるが!!、バイクで来たので、荷物になるので諦めていた。自宅に帰って、宅配便で発送してもらったダンボール箱を開けると、はしっこがおまけで8袋入っていた!こういう心遣いが、本当にお客さんの心を掴むんだよなあ。バイクで来たから、持って帰るのを諦めたなんて、分かったのかなあ...。このお店、通販もやっています(0183−43−2226)。
うどんを食べたら、次はラーメンである。最初は、稲庭のあとは山形ラーメンを堪能し、そのあと酒田にいくつもりだったが、時間的にかなり難しそうなので、酒田に直接向かうことにする。といっても、午後2時を大きくまわり、既に日が傾きはじめた。7時閉店の店が多いので、制限速度をかなり超えたスピードで走り続ける。走り続けるが、毎度のことながら、なかなか着かない。焦る気持ちを押さえながら、ネズミ捕りにも気をつけていると、目が疲れてきた。仕方ないので、交代で左右の目を閉じながら、さらに走り続ける...。
やっと、酒田に着き、焦点が合わない目で地図を見ながら、なんとか三日月軒を発見!バイクを付けるが店に活気がない。地図を見ながら、確認していると、2階からオヤジさんが出てきてくれた。
なんでも、この日はお客さんが多くて4時過ぎに麺が売り切れになってしまったとのこと。この周辺の有名なラーメン店はもう全て閉まっているという...。あれだけ無理して走ってきたけど、全く意味がなかった。皆さん、こういう有名店は余裕を見て、早めに来ましょう。まったく、泣いても、泣き切れない。
駅前のホテルにチェックインして街中を徘徊するが、1時間くらい歩いてみたが、やっているのは、焼き鳥屋とその隣にある、どさん子ラーメン店のみだった。結局、チェックインしたホテルの1階にある、居酒屋で夕食とする。とはいっても、米どころ新潟、山海の珍味を味わえるのかと思ったら、期待を大きく裏切られてしまった。東京の居酒屋のほうが、ずっと安くて、いいものを出してくれる。こんな夜は不貞寝(ふてねだよ、読めた?)と、死ぬほど日本酒とビールを飲んで寝てしまった。
8月16日(木)AM 7:00
絶対にどこかおかしい。昨夜、深夜まで、あれだけ酒を飲んでいたのに、目が覚めたのは6時過ぎ。とりあえず荷造りして、チェックアウトしても、7時前だった。体ははっきり自覚できるくらい疲れているのだが、テンションが高くなってしまっているのか、遠足の朝状態なのか、よくわからないが目が覚める。
とりあえず、近くのコンビニで、2個入りのおにぎりを購入し、駐車場で食べていると、そのコンビニの前にもラーメン店があることを発見する。
「こういう店が美味かったりするんだろうなあ...」と思い、1つ目を口に運んで、暫くすると、店の人が出てきた。「朝早くから仕込みかあ、大変だなあ」と思って見ていると、なんと暖簾を出しているではないか!! 恐る恐る店の人に、「もう開店ですか?」と聞いて見ると、初老の夫婦が顔を見合わせて、「はあ...」という。それでは、ということで、ラーメンをお願いする。
これまでいろいろなお店に入っみたが、朝7時は初めてである。あの有名な「酒田ラーメン」だから、きっと美味いはず、という気持ちと、残りの半分は、こんな朝早くやっているのだから、期待しちゃいけないと、いろいろ期待と不安が混じりあった気持ちでラーメンを待つ。
出されたラーメンは、はっきり言って後者であった。本音は先に買ったおにぎりを食べたいくらいであったが、ほとんど無理やり開店させてしまった経緯を考えて、完食することにした。腰は全くなく、ボヤーンとした麺。さらにその麺の量が、普通の倍くらいある。スープも酒田ラーメンらしく、あっさりしているが、味わい深い、ようなところは全くなく、「先週ラーメン屋を開くことしました。今は勉強中でーす!」といった感じ。
とりあえず、早く食べ終わって店を出たかったが、なかなか麺が無くならない。想像していた以上に満腹になってしまった。残ったおにぎりは、捨てるのはもったいないので、10時のおやつにすることにした。
ちなみに、三日月軒と同じくらい酒田で有名なラーメン店、満月の前を通ったので、記念撮影。やっぱり、美味い店はまだやっていない。
さて、本日の林道は朝日スーパー林道。全国的に有名だけど、スーパー林道としては短めのダート22km。その後、三面林道、ダート7km経由で小国町にに抜ける。酒田から朝日村までは超退屈な山形自動車道。山形からほとんどの間が片側1車線ということもあるのか、通行料金が高いのか、交通量が極端に少ない。
ボケッと走っていたら、行き過ぎて月山まで行ってしまった。最近工事が完成して延長されたようだ。逆に、月山に来てみたら、ゴールデン・ウィークにここに来て、あまりの積雪にGive
Up!! してしまったことを思い出した。苦い思い出である。まあ、今日、未だに生きているのも、その慎重さのお陰だと思うことにした。あんまりつまんないことで命を粗末にしたくないもんね!
ビックリするくらい段々幅が狭まる県道を走り続けると、今日もハッとするような光景が...。
自然の美しさには、人工で作られたものではかなわない、人の心を一瞬で奪っていくような力を感じる時がある。しかもその一瞬は、偶然というべき絶妙なバランスの上に成り立っている。多分、この景色を曇りや雨の日に見たら、なにも感じないかもしれない。一方、紅葉の時期にでも来て見たら、今回以上の感動を与えてくれる可能性もある。
ディズニーランドは1年中、訪れる人が期待したものと全く同じ感動を与えてくれる。季節感の無い世界に身を置くということは、時間という要素がなくなることで、過去に起きたイヤーナことも、将来に対する不安もなくなるのだろうか...。無個性の、まるで入場している人達全てが自分の名前を忘れてしまったような光景は、記号論的にみれば面白いのかもしれないが、私にははっきりいって不気味に感じる。
だいたい、日本人の女性の全てが「ミッキー・マウスが大好き!」、なんて言い出しそうな勢いを、相変わらず感じるが、そもそも、「ミッキー・マウスはネズミだよ!」 最近は多くの家庭にネズミが出なくなったから、一種の愛玩動物というポジションを得てしまったのかもしれない...。なんてことを考えながら、走り続けると、いよいよ朝日スーパー林道が始まる。
林道の路面の状態は、ちょっと砂利が浮いているものの、よく整備されていて走りやすい。言い方をかえれば、ちょっと物足りない気がする。はっきりいって、退屈だ。ほとんど舗装路と同じようなペースで走っていると、まるで四国の四万十川上流で見たような光景を発見する。
朝日スーパー林道の次は、三面林道。ここは新潟側がダム工事のため通行止めになっているが、「少々の無理と少々のゴメンナサイ」でなんとか通過。キーワードは「勇気を持って、急がば回れ」。三面林道はこのツアーの中では一番林道らしい林道。しかし、ここも生活林道らしく初級者でも十分にOK、いいかえれば、ガレ地など全くないので、やはり走り応えはない。
思っていたより早い時間に小国に抜けたので、またちょっと無理して山形に向かう。小国周辺もそばの名産地という看板を見つけた。また今度来てみよう。
ちょっと山形駅周辺で迷ったが、なんとか次のガサイレ先、萬盛庵に入る。目当ての「紅花蕎麦(べにきり)」は売り切れ...。仕方ないので、「お重そば」を注文。運ばれてきた熱いお茶をすすり始めたころ、なんと暖簾をしまいだした。「えっ!!」と思って、時計を見ると、午後2時。閉店の5時まではまだ3時間もある。ラッキー!と取ることもできるが、すごい殿様商売である。逆にタッチの差で間に合わなかったら...酒田の苦い経験が頭に浮かぶ。
運ばれてきたお重そばは想像どおり、そばがお重の中に入っている代物。老舗の貫禄を感じる、使い込まれたお重は、食べる側にある種のプレッシャーをあたえる。そばの味も格別で、真夏の強い日差しの中を走ってきた体には、とっても優しく、ありがたい。問題は食べる側。そばの美味い、不味いは分かるものの、美味いそばが、どのくらい美味いかが、さっぱりわからない。「この店はとにかく有名で、味も美味いので是非行ってみてください」としか表現できないのが残念である。まだまだガサイレが足りない。やっぱり捜査は足で稼がなくては。事件は現場で起きているのである。
店を出た後は帰路に着く予定であったが、せっかくきた山形、今注目を浴びている、冷しラーメンにトライすることにする。ガサイレ先は、北山形駅前にある、栄屋分店。冷しラーメンは、この店が開発されたといわれている。スープに牛脂を使うなど、いろいろ苦慮されたようだが、そんなに美味いものじゃない。冷たくても食べることができるが、エアコンがこれだけ普及した今、わざわざ食べに来る価値はない。つけ麺や盛そばなど、温かい汁につけないことで、麺の美味さをダイレクトに味わうことができるなどのプラス要素がないのが残念。一応、完食したが、今度は普通のラーメンを食べてみたい。
山形冷しラーメンはそんなに騒ぐようなものじゃない!?
冷しラーメンも食べたし、さあ、家に帰ろう。帰りに佐野S.Aで給油休憩の際に、麺売り場をチェック。どこかで見たような光景だと思ったら、上りと下りのS.Aは隣合わせ。恐らく同じ経営なのだろう。マニアの間では、「佐野S.Aの上り側はレベルが高い」といわれているだけに、意外な感じ。もし、あの下り側のレベルで騒がれているのであったら、言語道断。もしかしたら、レストランが美味いのかなあ、と思い、行ってみると長蛇の列。仕方なく、走り続けることにする。
結局、夜のそんなに遅くない時間に自宅に到着。途中、散々クルマの横をすり抜けしたり、事故ったバイクを何度か見たので、精神的にも、体力的にも限界。でも、今回の東北ガサイレツアーは本当に充実していた。一度も雨らしい雨に降られなかったのも大きい。ヤマセもなかった。鳥しげのオヤジには会えなかったけど、盛岡のジャジャ麺、白神林道、稲庭うどんと3つの主なガサイレも敢行。もちろん、故障を含め、事故が全くなかったのは神様に感謝!! あっ!でも酒田ラーメンを食べれなかったのは本当に残念!! 今度また絶対いってやる!!
<ミッション・コンプリーテッド!>
教訓 : 早寝早起きは三膳の得 売れきれ次第閉店の店には早めに行こう!